フリーランスの単価設定でやりがちな失敗 ── 目標実質時給から逆算する
会社員時代の月給からの逆算、稼働率100%前提の見積もり、見えない時間の見落とし。単価設定でありがちな失敗と、目標実質時給から単価を逆算する手順を計算例つきで解説します。
独立してまず悩むのが単価の決め方です。高すぎれば仕事が取れず、低すぎれば働いても手元に残りません。多くの人が最初につまずくのは、単価そのものより「何を基準に決めるか」を間違えている点にあります。よくある失敗を3つ挙げたうえで、崩れにくい決め方を紹介します。
失敗1:会社員時代の月給から逆算してしまう
「前職の月給が40万円だったから、独立後も月40万円稼げればいい」。この発想が最初の落とし穴です。会社員の月給の裏では、社会保険料の会社負担、有給休暇、交通費、設備などを会社が支払っています。フリーランスはこれらをすべて自分で負担します。
同じ手取りを保つには、額面で会社員時代の1.3〜1.5倍を売り上げる必要がある、とよく言われます。月給ベースの発想のまま単価を決めると、働いても生活が楽にならない水準に落ち着いてしまいます。
失敗2:稼働率100%を前提に見積もる
「1日8時間 × 月20日 = 月160時間を売上に変えられる」と計算していないでしょうか。これは実現しません。実際に請求できる作業に使えるのは、営業・事務・学習・休みを除いた6〜7割が現実的なところです。
月160時間のうち実際に稼働に回せるのが100時間だとすれば、同じ月収を得るのに必要な時給は1.6倍になります。稼働率100%で単価を組むと、想定した月収に永遠に届きません。
失敗3:見えない時間をコストに入れない
制作していない時間は単価に反映しづらく、つい忘れられます。しかし実際には次のような時間が毎月かかっています。
- 営業 — 提案書の作成、見込み客とのやりとり、見積もり
- 経理 — 請求書の発行、入金確認、記帳、確定申告の準備
- 学習 — スキルの更新、情報収集、ツールの習得
これらは直接お金を生みませんが、事業を続けるうえで欠かせません。この時間を無視して単価を決めると、実際の実質時給は見積もりよりずっと低くなります。
対策:目標実質時給から単価を逆算する
失敗の共通点は、支出や実際の稼働時間を見ずに単価を先に決めてしまうことです。順序を逆にして、目標とする実質時給から積み上げると崩れにくくなります。
手順
- 必要な年間売上を出す — 生活費・税金・社会保険・経費・事業への再投資を足します。ここでは600万円とします。
- 実際に稼働できる時間を出す — 年間の労働可能時間から稼働率をかけます。週40時間 × 48週 = 1,920時間に、稼働率65%をかけて約1,250時間。
- 目標実質時給を計算する — 必要売上 ÷ 稼働時間。600万円 ÷ 1,250時間 = 約4,800円。
- 案件の単価に落とし込む — 見込み作業時間 × 目標実質時給が単価の下限です。80時間かかる案件なら、80 × 4,800 = 38.4万円が最低ライン。
目標実質時給 = 必要年間売上 ÷ 実際に稼働できる年間時間
案件単価の下限 = 見込み作業時間 × 目標実質時給
| 項目 | 金額・時間 |
|---|---|
| 必要年間売上 | 6,000,000円 |
| 年間の労働可能時間 | 1,920時間 |
| 稼働率 | 65% |
| 実稼働時間 | 約1,250時間 |
| 目標実質時給 | 約4,800円 |
この4,800円を持っておくと、案件ごとに「この単価と作業時間なら目標を上回るか」を即座に判断できます。単価を勘で決めるのをやめ、目標から逆算する。それだけで、働いても残らない状態から抜け出せます。
案件ごとの見積もり金額に落とし込む手順は、フリーランスの見積もりの作り方で作業の分解から答え合わせまで具体的に紹介しています。
決めた単価が実際に目標実質時給を満たしているかは、案件が終わるまでわかりません。Freelogue は案件ごとに作業時間を記録して実質時給を自動で算出するので、逆算した単価が正しかったかを1件ごとに確かめられます。ずれていれば、次の見積もりで単価を上げる判断ができます。
よくある質問
Q. 独立したばかりで実績がなく、目標実質時給どおりの単価では仕事が取れません。 A. 立ち上げ期は実績づくりを優先して、目標より低い単価で受けるのも一つの判断です。ただし「今は意図的に下げている」と自覚しておくことが大切です。実質時給を記録しておけば、実績が増えた段階で値上げを切り出す根拠になります。
Q. 稼働率は何%で見積もるのが妥当ですか? A. 業種や営業スタイルによりますが、60〜70%で見ておくと現実とのずれが小さくなります。まずは65%で計算し、数か月分の実稼働時間を記録して自分の実際の稼働率に置き換えていくと、見積もりの精度が上がります。
Q. 目標実質時給を上回る単価にすれば、それで安心ですか? A. 単価の提示額だけでは判断しきれません。修正や打ち合わせで作業時間が膨らめば、実質時給は下がります。案件終了後に実質時給を確認し、見込みどおりだったかを答え合わせする習慣をつけてください。