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フリーランスの値上げ交渉の切り出し方 ── 実質時給の記録を根拠にする

値上げを言い出せないのは、根拠になる数字が手元にないからです。値上げを考えるべきサイン、交渉前にそろえる実質時給の記録、実際の切り出し方と断られたときの選択肢まで解説します。

Freelogue編集部

「この案件、そろそろ単価を上げてほしい」。頭では思っていても、いざ切り出そうとすると手が止まります。関係を壊したくない、断られたら気まずい。理由はいくつもありますが、いちばん大きいのは、値上げをお願いする根拠が「なんとなくきつくなってきた」という感覚しかないことです。

感覚は相手に伝わりません。逆に、数字があれば交渉は「お願い」から「条件の見直しの相談」に変わります。この記事では、値上げを考えるべきサインの見分け方から、記録を根拠に組み立てる交渉の手順までを整理します。

値上げを考えるべき3つのサイン

なんとなく忙しいだけでは、値上げの理由になりません。次のどれかに当てはまったときが、条件を見直す現実的なタイミングです。

  • 実質時給が目標を下回っている — 自分で決めた目標水準に届かない案件は、続けるほど他の仕事に回せる時間を削ります
  • 他の案件より明らかに低い — 同じ時間を使うなら効率の高い案件に振り向けたい、という比較の話になります
  • 契約時より作業範囲が広がっている — 定例が増えた、修正の回数が増えた、隣接する作業を引き受けている。報酬が据え置きなら、実質的には値下げと同じです

継続が長い案件ほど、3つ目が静かに進みます。頼まれた側は断りづらく、頼む側は増えた自覚がない。だからこそ、どれだけ増えたかを数字で示す必要があります。そもそもその案件を続けるべきかどうかから考えたい場合は、割に合わない案件の見分け方もあわせてご覧ください。

交渉前にそろえる数字

準備するのは3つだけです。どれも作業時間を記録していれば出てきます。

1. その案件の累計作業時間

契約時に想定していた時間と、実際にかかった時間を並べます。「思ったより時間がかかっている」を、具体的な時間差で言えるようにします。

2. 実質時給の推移

売上を累計作業時間で割った実質時給を、契約開始時点から並べます。下がっていく線が見えると、値上げの必要性は説明しやすくなります。

時期月あたり報酬月あたり作業時間実質時給
契約開始時200,000円40時間5,000円
半年後200,000円48時間約4,200円
直近3か月200,000円55時間約3,600円

報酬は一度も変わっていないのに、実質時給は1年で3割近く落ちています。増えた15時間ぶんの作業は、無償で引き受けてきた計算になります。

3. 他の案件との比較

同じ時期の他案件と並べると、その案件だけが低いのかどうかがはっきりします。

案件月あたり報酬月あたり作業時間実質時給
取引先A(交渉したい案件)200,000円55時間約3,600円
取引先B150,000円30時間5,000円
取引先C300,000円65時間約4,600円

この3件を見比べれば、Aの報酬をいくらにすれば他と並ぶかも逆算できます。55時間で実質時給4,600円にそろえるなら、月25万円前後が目安です。交渉で提示する金額は、この計算から出すと説明できます。

切り出しやすい3つのタイミング

同じ内容でも、いつ言うかで通りやすさは変わります。

契約更新のときがもっとも自然です。「次期の契約について、条件を相談させてください。この1年で作業時間が月40時間から55時間に増えていて、いまの報酬だと以前の水準を保てなくなっています。月25万円でお願いできないでしょうか」。更新は双方が条件を見直す前提の場なので、切り出しても不自然になりません。

新しい作業を頼まれたときも好機です。「その作業でしたら対応できます。ただ月あたり5時間ほど増えるので、その分を含めて報酬を見直させてください」。追加のタイミングで言えば、値上げではなく追加分の見積もりとして扱えます。ここで黙って引き受けると、範囲の拡大が既成事実になります。

年度の変わり目は、相手側にも予算を組み直す都合があります。「来年度の予算を組まれる前にご相談したいのですが」と前置きすれば、相手も検討しやすくなります。逆に期の途中は予算が動かしにくく、通りにくいタイミングです。

いずれの場合も、伝える順番は「実績の数字 → 現状の課題 → 具体的な提示額」です。感情や愚痴を挟まず、事実と希望額だけを短く伝えたほうが検討の土台に乗ります。

断られたときの3つの選択肢

値上げが通らないこともあります。そこで終わりにせず、代わりの落としどころを用意しておきます。

段階的に上げる。「今期は据え置きで、来期から見直す」と時期を区切って合意します。すぐの増額より受け入れられやすく、次の交渉が約束として残ります。

報酬が据え置きなら範囲を減らす。「この金額を維持するなら、定例は隔週に、修正は月2回までにさせてください」。報酬と作業量の釣り合いを、金額ではなく時間の側で取り戻す方法です。

撤退ラインを決めておく。「実質時給が3,000円を下回ったら更新しない」と自分の中で先に決めておきます。基準があると、断られたときに感情で判断せずに済みます。空いた時間を実質時給の高い案件に回せば、収入は落ちないどころか増えることもあります。

交渉に必要なのは度胸ではなく、記録です。Freelogue は案件ごとにタイマーで測った時間と確定売上から実質時給を自動で算出し、取引先ごとに並べて比較できます(取引先別の売上ランキング)。次の更新までに数字を貯めておきたい方は、無料で試してみるところから始められます。

よくある質問

Q. 値上げはどのくらいの幅で提示すればいいですか? A. 他の案件の実質時給に並ぶ金額を計算し、そこから逆算するのが説明しやすい方法です。相場感だけで「2割増し」と決めるより、「作業時間が◯時間増えたので、その分を含めるとこの金額になります」と根拠を示せます。一度で理想額に届かない場合は、段階的な引き上げを前提に提示するのも現実的です。

Q. 何年くらい続けた案件なら値上げを言っていいですか? A. 期間そのものより、契約時と条件が変わったかどうかで判断してください。半年でも作業範囲が大きく広がっているなら相談する理由になりますし、3年続いていても条件が変わっていなければ、値上げの根拠は自分のスキル向上や相場の変化のほうになります。

Q. 交渉を切り出したら関係が悪くなりませんか? A. 数字と希望額を淡々と伝えるかたちなら、たいていは検討の相談として受け止められます。関係が悪くなるとすれば、感情的な不満をぶつけたときか、根拠を示さずに金額だけを要求したときです。事実を並べる準備をしておけば、その心配は小さくできます。

Q. 記録を取っていない案件でも交渉できますか? A. できますが、説得力は落ちます。過去の記録がないなら、これから1〜2か月だけでも作業時間を測ってください。「直近2か月の実績で月◯時間かかっています」と言えれば十分な根拠になります。次の更新に間に合わせるつもりで、いまから記録を始めるのが近道です。

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