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月額固定契約の実質時給の落とし穴 ── 稼働が膨らんでも報酬は変わらない

準委任・顧問・リテイナーなど月額固定の契約は、稼働が増えても報酬が変わりません。実質時給が静かに下がる仕組みを計算例で示し、契約時に決めておくべき条件と月次で確認する運用を紹介します。

Freelogue編集部

毎月決まった額が入る契約は、フリーランスにとってありがたい存在です。営業をかけ直さなくても収入の見通しが立ち、取引先との関係も安定します。準委任、顧問、リテイナー。呼び方は違っても、月額固定という点は同じです。

ただ、この契約には固有の弱点があります。稼働が増えても報酬は変わらないという点です。金額が動かないぶん、割の良さが落ちていることに気づきにくく、気づいたときには何年も経っている。月額固定の案件で起こりやすいのは、そういう静かな目減りです。

報酬が動かないから、悪化に気づけない

固定報酬の案件なら、作業が膨らめば「今回は赤字だった」と案件の終わりにわかります。時給制なら、稼働が増えれば請求額も増えます。月額固定だけが、稼働が増えても請求書の数字が変わりません。報酬形態ごとの違いは業務委託の報酬を時給換算する方法で整理しています。

しかも月額契約は終わりがありません。毎月同じ額が入ってくるので、区切りをつけて振り返る機会も自然には訪れない。だから実質時給が下がっていても、通帳の数字は変わらず、なんとなく忙しいという感覚だけが残ります。

稼働はこうして増えていく

契約時に想定していた稼働は、放っておくとほぼ確実に増えます。増え方には型があります。

  • スコープクリープ — 契約書に書いた業務の周辺に、少しずつ隣接作業が寄ってきます。1回あたりは小さく、断る理由も見つけにくい
  • 「ついでに」の依頼 — 定例の終わりに「ついでにこれもお願いできますか」。単発なら数十分でも、毎週続けば月に数時間になります
  • 定例の増加 — 関係が深まるほど会議に呼ばれます。同席する会議が増えると、手を動かす時間はそのぶん夜に押し出されます
  • 担当者の交代 — 引き継ぎと関係づくりに時間がかかり、決まっていたはずの進め方も仕切り直しになります

どれも取引先に悪意はありません。頼む側は自分の依頼が積み上がっている全体像を見ていないだけです。

計算例:月額30万円の実質時給の推移

月額30万円のリテイナー契約で、稼働だけが増えていった場合の実質時給です。

時期月額報酬月あたり稼働実質時給
契約開始時300,000円50時間6,000円
1年後300,000円80時間3,750円
2年後300,000円120時間2,500円

報酬は2年間まったく同じです。それでも実質時給は6,000円から2,500円へ、6割近く落ちています。2年後の120時間は、契約開始時と同じ実質時給で換算すれば月72万円ぶんの仕事量にあたります。

この推移が見えていれば、80時間に届いた時点で条件の相談ができました。見えていなければ、120時間になっても「最近この案件が重い」で終わってしまいます。

契約時に決めておく3つの条件

いちばん効くのは、契約の段階で稼働に枠をはめておくことです。

想定稼働時間を書く。「月額30万円(想定稼働:月50時間)」と明記します。金額だけの契約書は、実質的に稼働無制限の約束になりかねません。時間を書いておくと、増えたときに「想定を超えています」と事実として伝えられます。

超過時の精算ルールを決める。「想定稼働を月10時間超えた分は、1時間あたり◯円で別途精算」と書いておきます。超過分をすべて請求するかどうかは関係しだいですが、ルールがあれば切り出す口実になります。

見直しのタイミングを決める。「半年ごとに稼働実績をもとに条件を見直す」と入れておきます。定期的な見直しが契約に組み込まれていれば、値上げの相談を毎回ゼロから切り出す必要がなくなります。

月次で実質時給を確認する

条件を決めても、実績を測っていなければ使えません。月額固定の案件こそ、作業時間の記録が要ります。

やることは2つだけです。ひとつは、その案件にかけた時間を毎回記録すること。打ち合わせや短いやりとりも含めます。もうひとつは、月末に月額報酬をその月の合計時間で割ることです。数字を数か月ぶん並べると、増えているのか、たまたま忙しい月だったのかが区別できます。

取引先に稼働の実績を示すときは、作業記録をそのまま出せると話が早くなります(作業記録を PDF / CSV で出力する)。Freelogue は月額固定の案件でも毎月の売上を自動で下書きし(月額固定案件の売上を自動生成する)、記録した時間と突き合わせて実質時給を算出します。無料で試してみるところから、まずは1か月ぶん測ってみてください。

よくある質問

Q. 月額固定と時給制は、どちらが有利ですか? A. 稼働が読めるかどうかで決まります。作業内容が定型化していて稼働が安定するなら、月額固定は営業の手間が減るぶん有利です。逆に依頼量の波が大きい取引先なら、時給制のほうが増えた分を請求できます。判断の材料になるのは、実際にかかった時間の記録です。

Q. 契約書に想定稼働時間を入れたいと言うと、警戒されませんか? A. 「どこまでを月額の範囲としてお引き受けするかを、あらかじめすり合わせておきたい」と伝えれば、たいていは合理的な確認として受け止められます。範囲が曖昧なまま進むのは取引先にとってもリスクで、想定を超えたときに突然の値上げを切り出されるより、先に決まっているほうが予算も組みやすくなります。

Q. 稼働が想定を超えた月は、必ず超過分を請求すべきですか? A. 毎月きっちり請求しなくてもかまいません。繁忙期にならす運用も現実的です。大事なのは、超過が続いたときに条件を見直す根拠として記録が残っていることです。請求しないと決めるのも、数字を見たうえでの判断ならかまいません。

Q. すでに何年も続いている案件でも、いまから条件を決められますか? A. 決められます。次の更新のタイミングで「これまでの稼働実績をもとに、想定時間を明記させてください」と提案するのが自然です。過去の記録がなければ、これから2〜3か月ぶんを測ってから相談すれば十分な根拠になります。

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